【セネガル】



『バーの女性たち』 No.15

 奴隷島とも呼ばれるゴレ島。観光化された表側と異なり路地裏はとても素朴だ。美しい景色とは裏腹に悲しい黒人の歴史を垣間見ることができる。
 フェリーでダカールへ渡る。夕暮れの街を散策してバーでくつろぐ。移動の厳しさと比べて都市は実に過ごしやすい。田舎と都会のギャップが激しいようだ。
 素敵な女性たちが誘ってくる。どうやら売春嬢らしい。何語で喋っているのかさっぱりわからない。西アフリカの多くの国々の公用語はフランス語。しかし、現地の人たちのほとんどは地元の言葉を使っている。フランス語を話せる人はそれほど多くない。さらに英語がわかる人ともなれば滅多にお目にかかれるものではない。いろんな方法を駆使して彼女たちと意思の疎通をはかる。言葉ができない私にとっては、相手が何語を使っていようと構わない。不思議とコミュニケーションがとれるものだ。
 何ヶ所かのバーを巡る。かなり仲良くなった女の娘にはビールを奢ってあげたりして一緒に楽しむ。地元の言葉を教えてくれたりもする。だけど、買春をしない私は彼女たちを買ってあげることができない。ちょっと心苦しく思える。



『想い出のセネガル女性』 No.16

 ダカールのマルシェで知り合った二十三歳のセネガル男性。バスに乗って郊外にある彼の家へ遊びにいく。小さな家、やや見すぼらしいけれど、こちらではそこそこ裕福なのかもしれない。
 彼の妹と意気投合。二十一歳の小柄な娘。片言の英語で熱心に喋りつづける。彼女と二人で中心街へ戻る。地元の伝統音楽や踊りの練習、観光名所ではない穴場。路地裏の面白そうなポイントなどを案内してくれる。珍しい食べ物なんかも説明。けっこう美味しいものが多い。
 宿へかえって、しばらく一緒に過ごす。彼女が泊まりたいというが、オーナーからダメだと言われる。明朝にはここを去らなければならない。名残惜しいけれど、バス乗り場まで見送って別れる。
「手紙、書くから。写真、送ってね、待ってるから。とても楽しかったわ」
 日も暮れた街を独り歩く。宿ちかくのバーでビールを飲みほす。たった一日だけの出会い。旅とはそんなものかもしれないが、すこし感傷的になってしまう。二人っきりの時間。ずっと忘れることはないだろう。



『鉄道の情景』 No.17

 私は列車の旅が大好きだ。ガンビアからギニアへ抜けないでダカールへと引き返したのも、列車でマリへ行きたいから、といっても過言ではない。車内は予想どおりの大混雑。ほとんどの人が持ちきれないほど多くの荷物を携えて乗り込む。座席や荷物の置き場所で言い争いもおこる。
 駅へ停車するたびに大勢の売り子が頭に商品を乗せて売り歩く。みんなは窓から思い思いの品物を買う。駅にはかなり長い時間停まっている。時刻表など関係ない。ホームへ降りてのんびりしたり、買い物をしたり。また、そういった光景を楽しむ。車内の喧騒から解放されるひととき。だけど、構内も凄い混雑だ。すこし離れた木陰で寝ころがって休んでいる人も。列車が動きはじめると自分がいた車両へ飛び乗っていく。
 そんな車内の様相とはまるで関係なく、車窓には雄大な景色が流れている。



『列車での触れ合い』 No.18

 ずっと近くにいた、マリのおばさん、ブルキナファソのおばあちゃん二人、マリのおじさん。そんな人たちと親しくなる。
 みんなが自分たちの食事をわけてくれる。わいわい喋りながらの食事だ。といっても私とは言葉が通じない。それでも色々と楽しく食べられる。もちろん手掴みで。鶏肉の揚げ物、魚の焼き物、野菜の煮物。グチョグチョに混ぜて食べるので、ちょっと不潔で気持ち悪そうに見えるかも。だけど、お腹は問題ないし、なによりも旨い。
 ミネラル水のボトルに入っている赤いジュース。マリのおばさんが「自分のと同じだ」と言っている。でも、私のはジュースではなくてロゼだ。こんなたわいもないことを話しながら、車内での時間は過ぎていく。




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