〜W体験記★ヒッチハイクで現れた女〜

 『吹っ切れた女旅人』

エジプト/カイロ

IMAGE-DATA 「こんにちはーっ!」
 いきなり耳に入った日本語。明るい女性の声だ。大勢の人で賑わう繁華街の道ばた。私の側に停まった車から彼女が降りてくる。小型のザックにラフなスタイル。かなり旅慣れていそうだ。

「あっどうも、こんちは。こんなところでどうしたんです? その車の彼って、友達ですか?」
「ううん、ヒッチハイクで拾ってもらったの。ここまで運んでもらっただけ」
 私に向かってそう告げる彼女、若い運ちゃんに対して「バイバイ」ってな感じで挨拶している。

「この街、いま着いたばかりで全然わかんなくって。いい安宿知ってる? おなかすいてない? 時間あるかなぁ? 近くでなんか食べましょ。奢ったげるからさ。なにかいい話でも聞かせてよ」
 なかなか、ざっくばらんで面白そうな女性。歳のころは三十ちょっとって感じだろうか。私も暇だったもので、すぐ近くの汚い安食堂でおともする。

「わたし、旅に出てから、まだ二年ちょっとなんだけど。あなたも結構、旅慣れていそうね」
「ま、それなりって感じかな。それにしても、ヒッチでまわってるなんて気合いが入ってんねぇ。アラブじゃ、いろんな男がうるさく言い寄ってくるでしょ。女性だったら、そこそこ危ないんじゃないの」
「そうねぇ、今までの旅や人生で培ってきた経験もあるし。当然、相手をよくみて、相手を感じて、自分の眼を信じて。それで自分が責任を持つ。だけど、過信は禁物よね。それはわかってる。まあ、最終的には強盗や犯される覚悟まで、ちゃんとあるから……」

「んじゃあ、ぼくが犯しちゃおうかな。きみって素敵だからさ」
「ふふっ、わたしって、そういうジョーク嫌いじゃないわ。もし縁があったら、試してちょうだい……」
 半分シャレで半分マジに誘ったのだが、まあいいか。

 元々、旅というのは女性のほうが楽なもの。ヒッチハイクの成功率からしても全く違う。確かに危険も多いかもしれない。けれど、いつでもどこでも男性よりも圧倒的によくしてもらえるものだ。

「でもね、犯されてもいいなんて思ってるわけじゃないのよ。最悪、そういった覚悟を持って臨んでるってことね。あなたもいろんな危険な地域でも旅する人なら、最悪の場合、死ぬ覚悟は持ってるはずでしょ」
「まあ、そうだよね。自分自身のリスク管理の意識なんて当たり前のことだし、普段でもそういった心構えはあるよ。やっぱり、自分の決断と行動には、責任と覚悟が必要だからね。残念ながら、いまの日本じゃ、おろそかになっちゃってるけど……」

 やはり女性の吹っ切れた旅人というのは凄い。なぜか男の強者よりも女の強者のほうが凄く思えてしまう。今までの経験からしてもそんな気がしてならない。

  〜 吹っ切れた女旅人 おわり 〜


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