エル・サルバドル/エル・アマティロ
エル・サルバドルの国境で、ある旅人と出会う。中米に入ってから三人目の日本人。もうすこし多いかと思っていたけれど、意外と出会わないものである。
彼はメキシコで働いているという。いまは長期休暇を取って中米を旅しているらしい。どうでもいいので仕事のことは訊かなかったが、まともな会社ならば何ヶ月も休暇を貰うのは難しいだろう。バイトか不法就労なのかもしれない。
でもさすがに、スペイン語はペラペラ。だけど、彼いわく「メキシコのスペイン語とすこし違うので戸惑っている」とのことだ。まあ、スペイン語ができない私にしてみれば、スペインだろうとペルーだろうとエル・サルバドルだろうと、ほとんど変わらない。
彼はメキシコ国内の遺跡巡りをして、ベリーズ、グァテマラ、エル・サルバドルとまわってきた。これからホンジュラスに入国して、テグシガルパへ向かうそうだ。その先の予定は、ホンジュラスのカリブ海側を訪れてから、再びテグシガルパに引き返す。でもって、ニカラグアへと抜けるらしい。
ちょうど逆のルートになるのでお互いに情報交換。エル・サルバドルの治安は考えているよりもいいらしい。闇レートやバスターミナルなど基本的なことや、個人的な体験情報なんかも話す。
「ベリーズはビザ無しでも入国できますよ」
と、彼は自分のパスポートを見せる。確かに、ビザが無いのに出入国スタンプはある。私は今回の旅ではベリーズへ訪れるつもりはない。そんなもんで、べつに深くは追求しなかった。でも、どうやら本当にビザ無しで通過してきたようだ。
「ニカラグアにもノービザで行こうと思ってるんですよ。国境で交渉してみればなんとかなるでしょう。ま、ダメだったらビザを取りますけど」
「ベリーズの国境の具合が、どの程度のもんだったのか知らないけど。ニカラグアはけっこう厳しかったから無理だと思うなぁ。それにビザが無いと、まずホンジュラスから出国させてもらえないんじゃないかな。ぼくがコスタリカを出国するときには、ニカラグアのビザを確かめられたよ」
「へぇー、そうなんですか。やっぱり、やばいかなぁ」
「うーん、テグシガルパでビザを取っとくのが一番無難だと思うけど。もちろんぼく自身もダメだった経験があるわけじゃないし。まあ、やってみなきゃ、ダメかどうかはわかんないからね」
元々、国境情報というのはとても流動的なものである。一般的なことは誰にでも言えるかもしれない。でも当然、それは絶対的なものであるはずがない。他の人が大丈夫だったからといって、自分も大丈夫である保証はない。また、自分が大丈夫だったからといって、他の人もそうだとは限らない。まして、自分がやってもいないことを云々いえるわけもないのである。
旅は一般論ではない。個人的な特殊な経験でしかないのだ。旅はチャレンジ。何事も試してみることが重要なのである。その個人的な体験の積み重ねが旅を創っていくからだ。
しかし、悲しいことかな。いまの自分には大きなことを試みるだけの余裕があるとは、残念ながらいえないのである。
〜 旅はチャレンジ おわり 〜
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