コロンビア


『帽子の中身は』


 カリからの夜行バスに東洋人っぽい女性。話しかけると、日本人だと言う。「隣にきてもいいですか?」と言って、場所を移動してくる。車内でも帽子を深々とかぶったままのおかしな娘だ。
「日本人と会えるなんて嬉しい。心細くって。特に夜行バスだと、荷物を切り裂かれて盗まれるし、一緒だと安心できますからね」
 そういって、大きなザックをひしっと膝の上に抱え込む。
「一晩中そうしているの? ザックなんて盗まれて困る物は入れてないでしょ」
 四六時中、帽子をかぶっている理由は、相手に表情を読まれにくくするため、その中には非常事態用のナイフを常に忍ばせているらしい。だけど、日本人だと安心できるという意識はもっと危ないだろう。


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