ヨルダン


『灼熱のペトラ』

IMAGE-DATA  両脇には切り立った崖。強烈な日差しを遮り、涼しい風も吹き抜ける。天高く細長い岩山の隙間から、有名なエル・カズネが姿を現す。映像などで観た世界そのものだ。その巨大な姿は見るものを圧倒する。でも、心の底からこみ上げるような感動は、なぜか湧いてこない。
 岩山の風景と幾つもの遺跡を巡りながら長い道のりを歩む。夏の中東、真昼の炎天下。灼熱の太陽が徐々に体力を奪っていく。ここまで、かなり無理な行程で突破してきた。残された体力も時間もそんなに多くはない。それにも関わらず、最も山奥の頂にあるペトラ最大のエド・ディルを目指すことに決める。まだ気力は萎えていない。心身ともに動かせる一番大切なものが残っている。
 元気であれば、そうでもないのかもしれない。けれど、いまは長く苦しい山登り。どのくらいで終わりなのか、全く見当がつかない。延々と続く山道。複雑に激しく浸食された渓谷、色彩豊かに幾層にも彩られた美しい岩肌、不思議な雰囲気を醸しだす。これらの幻想的な景観が、少しだけ疲れを麻痺させる。
 突然、広い場所に出る。右へ振り向けば、巨大なエド・ディルが眼に飛び込む。しばし立ち尽くしてしまう。まるで忘れかけていた感動が甦ったようだ。

次ページへ!

ホーム位置へ!