【中国(四川省,雲南省,貴州省)旅行概況】  2008年4月25日(金)から5月6日(火)のほぼGWぴったりの日程に て中国へ訪れた。  いつものように4月まで仕事の状況をみながら長めに休めそうであれば、春期 旅行として自腹の有料券にて遠出を狙っていたが、状況的にとてもこれ以上の休 暇取得が望める見込みはなくなったため、最低レベルの上記日程で押さえていた 無料券を使って、中国の四川省から雲南省、貴州省にかけて旅することに決めた。  結局、一年のうちでメインの春期旅行にも関わらず、昨年に引き続き短めの日 程となり、もはや春期旅行としての3週間や4週間はおろか、2週間にも及ばな い有り様で、今年も残念ながら努力も虚しく2年連続で単なるGW旅行と化して しまった。長めには休めずGW旅行になったとはいえ、なんとか12日間は確保 できたので、最悪だった昨春の9日間に比べればまだマシかもしれない。  航空券はノースウエスト航空(NW)と中国南方航空(CZ)のジョイント特 典旅行。成田発にて往復ともに広州で乗り換えの成都in、貴陽outの無料券 をNWの2万マイルにて発券した。この航空券はいま旅行者を非常に苦しめてい る高額なサーチャージが不要なので大いに助かる。  往路はいつもの如く午後ぎりぎりまで仕事をしてから成田空港へ直行。広州に は深夜着だったため空港で夜を明かして、翌朝そのまま成都へと飛んだ。  帰路は貴陽からのフライトは夕方に広州へ着いたが、広州市街へは出ずに今後 のことも考えて空港からわりと近場の新しい安宿の開拓に精を出して、翌朝の便 にて成田へ飛んで帰国の途についた。  今回の中国旅行では、成都を発って貴陽に至るまで、四川省(3度目)、雲南 省(2度目)、貴州省(初めて)にかけてを旅した。  主たる旅行ルートは(=:鉄道、〜:バス)、成都〜峨眉山=攀枝花〜永勝〜 シャングリラ[香格里拉/中甸]〜虎跳峡〜麗江(玉龍雪山、白沙)〜昆明=安 順(黄果樹大瀑布、天星橋、陟坡塘、龍宮)〜貴陽(天台山、天龍屯堡古鎮、紅 楓湖)であるが、その近郊の村や観光ポイントも含めていろいろと巡った。  初めて四川省(約11年前)を訪れたときは、長江三峡下りがメインだったた め、辛うじて楽山には訪れる時間があったものの、残念ながら峨眉山を巡る時間 はなかった。2度目の四川省(約5年前)でもチベットがメインだったため、成 都とその近郊しか訪れる時間がなかった。初めての雲南省の旅(約8年前)でも シーサンパンナ[西双版納]がメインであり、大理までしか北上する時間がなか った。  今回、成都から貴陽までをまわったのは、初めての貴州省を巡るとともに、こ れまでの旅にて目前にしながらも行くことが叶わなかった場所を訪れるリベンジ も兼ねたといえるかもしれない。  為替レートは、1元=約15.5円、1ドル=約104円。  ホテルは、安宿ではなく普通の宿で40〜50元(お湯シャワー&トイレ、T V、AC等が付いている標準間のツイン一部屋の値切り後の料金)。普通の宿に あまりシングルはない。貴州省では宿が少ないせいかなかなか安くはならない。 80元〜100元は覚悟したほうがいいかも。貴州省でもそれなりに観光に力を 入れているようだが、まだあまり観光化されてなく、観光客もそれほど多くない せいかもしれない。とくに貴陽の宿には要注意、中レベルのほとんどの宿でも外 国人を泊めてくれない。  物価的には、肉系料理の食事にビールも付けて一食15元程度、野菜系料理に すればビール込みで10元くらいと、むかしに比べれば高くなっているものの、 まだまだ安く飲み食いできる。移動費はけっこう高くなっているが、最近は道路 やバスが新しくなっているし、昨今のガソリン高騰分も含んでいるため仕方ない かもしれない。およそ100km当たり20元ちょっとだろうか。  各観光ポイントの内容はガイドブックを見れば大体わかるので、すべてについ てはいちいち細かく説明しないが、なかでも蛾眉山や玉龍雪山は名が知れたとお りさすがのものがあった。水量によって迫力は全く異なるようだが、黄果樹大瀑 布も世界の名だたる滝を見ている私にとっても予想をうわまわる凄さだった。  四川省では、3千メートル以上ある山の頂にて雪景色の中を散策した「峨眉山」 の眺望も素晴らしいものがあったが、四川から雲南へと抜ける山々の「棚田」の 光景が一番の印象に残っているかもしれない。四川、雲南、貴州の各省いずれに おいてもかなり凄い棚田の風景が見られるが、とくにこの山越えの道(ダートの 崖)の険しい山間に連なる棚田に最も感動を覚えた。深い谷底に流れる川の河原 にまで棚田が広がり、いまの季節はちょうど田植えの風景も見ることができた。  雲南省では、5千メートル超の峰々「玉龍雪山」が最高だったが、多くの土地 を巡ってたくさん楽しむことができた。ちょっと観光化されすぎている感もある が、きれいな水路が網の目のように流れる「麗江」の古城(旧市街)の街並みは それなりに味があった。それでも、個人的には郊外の村「白沙」のほうが、素朴 で旧い趣も感じられてさらに気に入った。  雲南省のチベット族自治州である「シャングリラ[香格里拉]」は、チベット 自治区や四川省のチベット族居住区とも接しており、やはりほぼチベット的な感 じだったが、チベット暴動の影響はほとんど見られなかった。街なかでも3千3 百メートル以上はあるため、かなり寒いうえ、激しく体を動かすにはやや辛いも のがあり、軽い頭痛などの高山病の兆候も若干現れたものの、けっこういろいろ と動きまわってチベットの雰囲気を味わった。雲南のポタラ宮とも呼ばれている 「松賛林寺」をはじめ、旧市街やそこに点在する観光名所も良かったが、なんと いっても6千メートル級の峰々「梅里雪山」、5千メートル級の「白茫雪山」の 景観は格別であり、麗江への道中に望める5千メートル級の「哈巴雪山」の眺望 も素晴らしかった。  貴州省では、アジア最大の滝である「黄果樹大瀑布」も凄いものがあったが、 「天星橋」の奇景や絶景、「陟坡塘」の滝なども味わいがあったし、「龍宮」の 小舟での鍾乳洞探索もなかなかの趣向と景観だった。 「天台山」や「紅楓湖」はまあまあだったが、特筆できるのが「天龍屯堡古鎮」。 そこそこ観光化されているものの、鮮やかで独特な衣裳を纏った人たちの営みが 垣間見れる石造りの素朴な集落だった。一見むかしながらの少数民族の村落のよ うにも思えるが、ここに暮らす人々は少数民族というわけではなく、むかしの屯 田兵の末裔である漢民族の人たち。600年以上も前からほとんど外界から隔絶 された暮らしを送り、旧い独自の文化として現代にそのまま残された稀少な集落 である。薄い石版を積み重ねて造られた石造りの家々が密集し、他の中国の旧い 集落とは趣を異にする。村中が石造りで密集しているのも、そもそもは村全体を 砦として機能させていたそうだ。この旧き石々集落の散策を堪能するとともに、 集落特有の「地戯」という特殊な仮面や衣装を身に纏った戦いの舞も観賞するこ とが叶った。この地戯は数年前に話題となった高倉健主演の中国映画『千里走単 騎(単騎千里を走る)』で見ている方もいるかもしれない。題名(主題)は三国 志に由来する京劇の演目の一つから取っているが、映画のなかで見せ場ともなっ ている仮面の舞がこの地戯。映画自体は雲南省の奥地が舞台だったと記憶してい るが、作品中で見せる京劇の舞は紛れもなくこの土地の地戯に違いない。改めて 確認したわけではないが、私は中国の機内で4度もこの映画を見ているし、仮面、 衣装、舞を見る限りそう思える。  それから印象深かったのが貴州省のこのあたり一帯に広がる岩山の光景。林立 する緑に覆われた石灰岩の岩山が織りなす景観は格別だった。鋭く切り立って聳 える岩山、奇妙な形状を造り出す岩山、アポロチョコか鋭い円形古墳といった形 状の岩山群、それらが渾然一体となって一面にそそり立ち、桂林や石林ともまた 違った独特な絶景を造り上げていた。  街や都市部では、こじんまりとした「安順」がなかなかのんびりできて良かっ たが、「貴陽」や「昆明」の観光もそれなりに満足できた。とくに5月1日のメ ーデーにまわった久しぶりの昆明はいろんなイベントやお祭り騒ぎなんかで面白 かった。  といった感じで、多くの貴重な世界遺産や観光名所とともに、町並み、人々、 営み、文化、大自然、道中の風景、等など、たくさんのものに触れ合うことがで きて、とても充実した旅となった。              中国(四川省,雲南省,貴州省)旅行概況 おわり 《参考》  中国各地を旅して毎度思うことが、破格の観光料金。外国人料金があったむか しから物価に比べて安くはなかったのだが、近年は輪をかけて年々高騰の一途を 辿っている。とくに世界遺産などに指定されたものはさらに一層跳ね上がる。も はや物価の高い日本や先進国の入場料や費用を遥かに上まわっている。世界遺産 クラスだと3千円から5千円は覚悟しなければならない。(10年以上前ならば 外国人料金でも数百円レベル、5年ちょっと前でも千円台あればなんとかなった 記憶もある)  中国は有名どころの観光をしなければかなり安く旅できるが、まともにきちん と観光すれば今ではもう東南アジアあたりの出費では済まないだろう。しかし、 これからももっと値上がりしそうなので、訪れるならばやはり早めのほうがいい かもしれない。  以下、参考までに今回の旅での破格な観光費用の数例を挙げておく。前述した 食事の物価と比較すれば、いかに観光費用が破格に高いかがわかる。(1元=約 15.5円) [蛾眉山風景区] ・入場料        :150元 ・観光車        :70元(高山部までの全行程を含む) (車道で約50kmか登山道で約30kmを歩くならば不要(高低差は約2千メ ートル)。山域を3日くらいかけて泊まりながら巡る人以外はまず使う) ・ロープウェイ(高山部):40元(上り)、30元(下り) (観光しながら歩いて、上り約2時間、下り約1時間。歩く人もそれなりにいる。 私は上りだけ利用) ・ゴンドラ(中山部)  :40元(上り)、30元(下り) [玉龍雪山風景区](5千メートル超級の峰々、氷河、等など) ・入場料        :160元(入山料80元+保護料80元) ・観光車        :不要 (風景区内もローカル交通が走っているので安く済むが、待つのが嫌な人はタク シーを利用) ・ロープウェイ     :180元(往復) (3500mから4500m超まで上るため、歩くには高山雪山登山の装備と経 験があってそれなりの時間をかけなければ無理) [黄果樹風景区](アジア最大の黄果樹大瀑布、天星区の絶景や奇景、等など) ・入場料        :180元 ・観光車        :50元 (長距離を歩く時間と体力がある人は不要) ・ケーブルカー     :50元(往復) (歩く人のほうが多かった。もちろん私も歩いた)